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FrameMaker の逆襲

2008年04月01日作成   1page  2page 

FM8の紹介

さて,前置きが長くなってしまったが,残された紙面を使ってFM8の新機能と機能強化された点をご紹介させていただく

■新機能

1.Unicodeのサポート
今回のバージョンアップの目玉はこれであることに異論はないだろう。これまでFMは,UnicodeのXMLを入出力する際にも内部的にはShift-JISのコード体系が使用されISO-Latin1の域を出ることができなかった。そのため文字コードによっては置き換えに不整合が生じ,特に多言語展開を実現する上での障壁となることが多かった。

一度組版してからコードを置き換えて処理できればいい方で,時には文字でありながら画像として処理しなければならなかったり,書き出されるXMLが全て実体参照で成り立っていることもあった。

しかし,このバージョンから幅広い言語をそのままハンドリングする環境が整ったことになる。必然的に出力されるPDFのサポート言語も増大する。また,全てを試すことができてはいないが,多言語の辞書機能やハイフネーションもサポートされるとのアナウンスも力強いものである。

2.DITAのサポート

DITAとは,Darwin Information Typing Architectureの頭文字を取ったものでXMLベースの規格の一つである。特に製造業のマニュアル類に適用されることの多い手法で,マニュアルをトピック(topic)と呼ばれる小さい単位にブロック化し,そのトピックの並び順をマップ(map)と呼ばれる概念を用いて表現することを骨子としている。

これまでDocbookやJ2008といった人気を博したXML構造に変わり採用されることも増えてきた。

使用される企業カテゴリがFMの適用範囲とマッチしているため,FMは前バージョンの7.2から取り組みを強めており,標準でDITAを扱うことのできるプラグインを提供していたが,FM8からはその路線をより一層強め,独立したメニューで文書作成と管理手法を提供している。

ユーザは既存の文書をDITAの仕組みに合わせて構造化し,トピックを再利用したり,組み合わせを変更した用途の変更やファイルの集中管理による品質への貢献といった恩恵にあずかることができる。

3.リッチメディアのサポート

本来FMはDTPツールであるため,当然ながら主眼におかれているのは紙媒体の静的コンテンツであるが,マルチユースをにらんだ3Dモデルや Flash動画,Captivateで作成されたリッチメディアのサポートが新規追加されている。

これにより,紙のマニュアルでは静止画を表示させておきながら,環境が整っているところではオンラインファイルを参照しながら動画や音声で情報を配信したり,eラーニングコンテンツを作成したりすることが現実的になった。

4.テキスト編集のトラッキングとマルチプルアンドゥ

ここからはこれまでFMを使用してきたユーザにとって,思わずニヤリとしてしまう機能追加がリストされている。

筆頭は,ヒストリーパレットの搭載である。これまでFMは操作の取り消しを一回しか記憶することができなかった。他のワードプロセッサツールやCSの製品群に比べて明らかに見劣りしていたことは否めない。

しかし,FM8からはヒストリーパレットを使用してテキストの変更箇所をハイライト表示し,許可または却下したり,複数の取り消しをワンクリックで指示することができるようになった。

5.属性ベースの出力

FM8を使用してXMLの入出環境を構築する際に,これまではエレメントレベル(厳密に言えば最上位エレメント)を使用した出力条件しか利用することができなかった。しかし,今回のバージョンから構造の属性値を使用して出力条件の設定をすることが可能になり,構造化言語との連携がより柔軟に改善されている。

6.変換テーブル

FremeMaker7.xのバージョンから搭載されている機能だが,手間をかけずに既存のコンテンツを構造化することができる機能が改善され,機能強化されている。

■機能強化

1.コンディショナルテキストの出力条件の設定

FMにはコンディショナルテキストと呼ばれる機能があり,書式を指定してコメントや複数バージョンの文言を挿入し,表示させたり隠したりすることができる。これまでのバージョンでは構造化文書と連動するのは,その時点で選択されているコンディショナルテキストに限られていたが,今回のバージョンから構造化および非構造化文書の出力形式を柔軟に定義することができるようになった。

2.XMLラウンドトリップ

ラウンドトリップとは,FMの初期のバージョンから使われている語句だが,FM文書からXMLコンテンツを書き出して,またFM文書に戻したりするような,シームレスなデータフローを指して使われている。当然ながらこれまでも実現されていたものだが,注釈や変数・コンディショナルテキストなどの対応が強化され,様々な設定が保持されるようになった。

3.XMLスキーマ

これまでFMはSGMLの時代から連綿と続くDTDベースの文書型定義にしか対応できなかったが,XMLスキーマを使用してコンテンツの構造を定義できるように機能強化された。様々な標準スキーマがXMLスキーマとして公開されるようになっているので,構造化文書をハンドリングする際のメリットとなる変更である。

このように,構造化文書の側面から強化された点が多いことは素直に歓迎できる点ではないだろうか。FMのユーザのバージョンアップはあまり素早い方ではないと言われるが,今回のバージョンアップは前向きに考慮すべき要素が揃っていると言えるだろう。

おわりに

以上,若干熱に浮かされた感のあるレポートになったことは否めないが,期待感の表れとしてご笑覧いただければ幸いである。これまでFMを使われたことがないという方も,興味を持たれた方がいらっしゃればWebサイトより試用版をダウンロードすることができるので,一度お試しいただきたい。

ただ,この原稿をFMで執筆するに当たり,若干の不具合が感じられたのも事実である。特に日本語環境への対応に関して不可解なエラーメッセージなどに遭遇することもあった。しかし,Web上で不具合のレポートを参照することもできる上,この原稿を執筆している間にも矢継ぎ早のアップデートが提供されており,早期解決に期待されるところである。

また,私たち日本ユニテックはこれまでのFMと同様,セミナーやソリューションの提供に注力し,FMを使用したマニュアル作成のフローを支援する予定である。ぜひご期待いただきたい。

さて,FMの逆襲が始まった。その勢いを止めるべく,どこからか復讐はあるのか?それともしばらくは平穏な日々が送られるのか。スターウォーズ的にだじゃれで締めくくるならば,May the "Frame" be with you…。



【脚注】
1. 特に言及がない場合,文章中に記述される製品名は,アドビシステムズ株式会社が版権を保有しています。
2. この文章内では,技術者向けの取扱説明書・仕様書・部品表などを指す言葉として使用しています。
3. “http://www.adobe.com/jp/products/framemaker/”のページ内になる「無償体験版をダウンロード」からお進みください。
4. “http://www.adobe.com/jp/support/framemaker/”
5. 今回所々でオマージュしているのは,ユニテック内でFM 使いにコードネームがつけられているからです。
一番の使い手で“マイスター”の名を欲しいままにしている「ヨーダ大岡」,たくましい使い手に成長した「ルーク手塚」,私はさしずめ「ベイダー天野」というところ。いつから暗黒面に足を踏み入れたのか…。最後には改心したいと思います。

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